「キリン解剖記」(おすすめ本10)

こんにちは!

院長の松浦です。今週は久しぶりに僕のおすすめ本を紹介します!

『キリン解剖記』

著・郡司芽久 ナツメ社

 

本書は著者の郡司芽久(ぐんじ めぐ)先生が、キリンの首の研究で東京大学で博士号を取得するまでの体験記になっています。

 

キリンが好きだった幼少時代から、キリンの解剖に明け暮れた大学時代、そして大学院で研究の題材を四苦八苦しながら選ぶまでの様子をユーモラスな文章で紡いでいます。

 

郡司先生は現在「キリン研究者」として筑波大学に勤めていますが、世界でも数少ない”キリンの専門家”になると決めたのは東大に入学したての18歳の時でした。

 

最高学府の東大には一流の研究者が揃っています。大学一年生の郡司先生は、どうすればキリンの研究者になれるのか、沢山の先生に相談に行きますが決まって難しい顔をされました。

 

生き残っていくのが難しい理系の研究者の中でも、”キリン”に特化していくのは更に難しい事のようで多くの先生から進路変更を勧められたのです。

 

しかし大学一年生の後期に、ようやく進路を励ましてくれる先生に出会いました。

獣医学博士の遠藤秀紀先生です。遠藤先生は書籍も多数刊行されている、動物の遺体解剖のエキスパートです(ちなみに僕が人体の進化や動物の解剖学に強い興味を持ったのも、遠藤先生の書籍「人体 失敗の進化史」(ちくま新書)がきっかけです!)。

 

そして遠藤先生の下で沢山のキリンの遺体と格闘していくことになるのですが、そこからのエピソードは本書をご覧になってください(^^)

著者のキリンに対する愛情や研究に対する真摯な姿勢が、まるで青春小説の様に爽やかに描かれています!

 

本書の後半部分では大学院での卒業研究が紹介されています。著者の郡司先生は研究のテーマにキリンの「第一胸椎の役割」を選びます。

胸の骨の一番目が首の運動に関与するのではないか?というお題になります。

 

このテーマはキリンの解剖学の中でも、答えのでない難しいテーマの一つでした。

 

背骨は沢山の小さな骨がブロックの様に連結していますが、首の骨と胸の骨は明確に分けることができます。

胸の骨(胸椎)には肋骨という心臓を守る長い骨がくっついているので、あきらかに見た目が違うからです。

肋骨がある分、首の骨ほど自由に動かすことが出来ないので、胸の骨はキリンのあの優雅な首の運動には関与していないと考えられていました。

 

しかし、解剖されたキリンを深く観察していくと、どうも胸の骨の一番目(第一胸椎)が首の動きに関与しているような痕跡もあります。

 

定説に納得いかない郡司先生は並外れた集中力と、東大の最先端の設備をもって第一胸椎の謎に取り組んでいくのです・・・。

 

結果は本書を読んでいただければと思います!とても分かりやすく研究結果が紹介されています!

 

今回この本を紹介しようと思ったきっかけは、偶然、著者の郡司先生が僕と同年齢(1989年生まれ)だったからです。

自分と同じ時間を生きている人の中に、キリンの解剖に明け暮れた女性がいるなんて夢にも思いませんでした。

著者の研究に取り組む姿勢は、本当に見習うべきところが沢山あります。

好きな事を仕事にする事は多くの人にとっての理想ではありますが、好きな事を仕事にしている人は押しなべてストイックでもあります。

 

自分ももっと仕事を好きになろう!もっと体を研究しよう!と前向きになれる一冊でした!

 


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